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コラム * tannet flash
「レプリカ」と「バーチャル」の世界観
古川 俊弘

循環型のリアリティ


 〔毎日の循環の話〕
 アメリカ大陸横断マラソンというレースが1920年代、アメリカで開催された。西のロサンゼルスから東のニューヨークまでの約4000kmの距離を1日40マイル(64km)から50マイル(80km)走破し、ひたすらゴールを目指すレースである。「ツール・ド・フランス」の人間版として、灼熱の砂漠や雪の残るロッキー山脈を越え、草原地帯を延々と突き抜ける。

 賞金は当時では破格の2万5000ドル。興行として行なわれ、元オリンピック選手や賭けレースのプロランナー、ボクサー、イギリス貴族、踊り子など海千山千の人間が参加した。宿泊は簡易テントを毎日設営して食糧や物資とともに輸送団が同時に並走した。

 約3か月に渡る長期間を自らの足で移動する旅。気象や地理条件は違えど、基本的には走ることのみが変わらない事実として残される。次第に順応していく体は神経の隅々まで今日と昨日の違いを探り、最良と思われる方法を維持していく。継続する、順応していく、余分なものを排除していくことの繰り返し。細胞一つひとつに刻まれた記憶がリズムとなる。その胸中は推し測ることしかできないが、まず一歩、次の一歩、そしてまた一歩の思いが永遠に連続していく道程を支える。

 似てはいるが、まったく裏返しの話をひとつ。

 夜明けとともに、山の頂上まで1本1本、大木でつくられた杭を運び打ち込む。打ち終えたら、今度はその杭を1本1本引き抜いていく。それが毎日繰り返される。罰としてのその仕打ちは、無目的の目的として体と神経を苛む。昨日と変わらない今日が延々と続く日々。

 「循環」とは、物事が1か所に留まらずに巡る状態や、姿を変えながらも本質は存在し続けるという考え方を示している。大きなスパンでみると、毎日、陽は昇り陽は沈む。日々食べ、活動し、眠るというサイクルは大昔から変わっていない。

 〔循環器の話〕
 西洋医学では、かつて長いこと「四体液説」が信じられていた。古代ギリシャ・ローマの伝統によると、人間の身体は血液、粘液、胆汁、黒胆汁の4つの液体的要素から成り立ち、人間の健康状態や気質は各人がもつ4つの要素のバランスと風土との関係のなかで決定すると考えられた。

 血液が多い人は楽天的、粘液が多い人は鈍重、黒胆汁が多い人は憂鬱、胆汁が多い人は気むずかしい気質をもつとする。循環するものが随時体内を回っており、それぞれ4つの要素に対応して、春夏秋冬、冷熱乾湿、空気・火・水・土が配置されている。なお、現代医学ではこの説は継承されていないが、今でも血液型占いは根強い人気がある。

 現在、循環器科は様々な変調やあるべき状態を客観的数値で提供してくれる。悪いところの原因はこれなので、ここにも影響してきます。と淡々と示されるとき、悪循環という単語が頭をもたげるという経験は日常的な風景だ。

 〔地球の循環の話〕
 歴史は繰り返す、とよくいわれる。あるスタート地点に戻り、そこから始めると似たような事象が起きてくる。強いものは権力を拡大し勢力を増す。無理をする。裏切りが起こる。腐敗が蔓延する。権力を奪い次の時代を築くために立ちあがる勢力。血は流れ民は疲弊する。一方、数々の英雄伝説や悲話が生まれる。勃興し衰退する壮大な歴史絵巻。「誰のために」「なぜ」という問いは大きな傷跡を残しながらも、地球の歴史自体が循環している。歴史的消失・崩壊・不在を内に深くためこんだ現実世界のかたどりは過去の遺産を抱え、個人の短絡的思考は他者との比較によって安静を保とうとする。

 「循環型社会」という考え方が定着してきて、資源やエネルギーとのつきあい方が変化してきた。環境問題を筆頭に、生態系の維持・保存、持続可能な社会の実現を目指すべく法も整備されてきた。

 江戸時代はひとつの理想形として、資源の循環的活用が行なわれていた、との例がよくでてくる。鎖国政策により外国との取引はごくわずかであり、ほとんどのものが国内で生産・使用され、廃棄・再生されていた。たとえばワラは編み傘、草履、しめ飾り、弁当入れの原料、縄の原料、肥料、家畜の敷ワラなど実に用途が幅広い。灰も灰問屋という職業もあり、酒造や製紙、繊維、染色、釉薬、洗剤などに使われていたという。

 物事が淀みなく流れる姿は無理がなく気持ちがいい。ただ在るために在る、というのは比較の対象とはならない。まず一歩、次の一歩、そしてまた一歩と足跡を残すことが、循環型のリアリティとして説得力をもつ。

(ふるかわ としひろ/購買管理部 購買推進課 課長)


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