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HOME > tansei.net30号 > 新世代百貨店 21世紀の提言 連載第14回

東武池袋本店の「新ターミナル百貨店」構築作戦

東武百貨店 池袋本店
(株)東武百貨店 常務取締役
池袋本店長  橋本 啓二

聞き手/オフィス齋藤・代表 斎藤秀樹

”駅上SC化”へ向け、「全館改装」
多機能施設も搭載

橋本氏

 東武百貨店池袋本店は、92年の増床改装により売場面積8万3000m2、東京地区最大の百貨店となった。そして今回、最後の地下鉄「副都心線」開通を見据え16年ぶりに全館改装を展開中だ。同改装計画は、前期3年(06〜08年)、後期3年(09〜11年)、合わせて足掛け6年の歳月と129億円を費やし取り組んでいるもので、百貨店MDの充実・再強化にとどまらず、ターミナル百貨店のSC化へ向けた新たな機能構築が同時進行している点が注目される。

大丸東京店 東武百貨店池袋本店の地下1階エントランス バームクーヘン専門店「ねんりん家」(本館地下1階)
左●東武百貨店池袋本店
中●東武百貨店池袋本店の地下1階エントランス
右●バームクーヘン専門店「ねんりん家」(本館地下1階)

 

“駅上SC化”として
「低価格専門店」や「時間消費型施設」を導入、
機能充実へ

−東武百貨店池袋本店は今年3月下旬、3年にわたる前期リニューアル計画を竣工させました。今回の全館改装に臨むにあたって橋本常務本店長は、狙いをどこに置いてスタートさせたのですか。そのポイントからお聞かせください。

橋本 92年に大増築を果たして以来、池袋本店は大規模な改装は行なってきませんでした。その間、社会・消費者の変化もあり、市場環境と商品カテゴリーのバランスにズレが出てきていました。

 また、新世紀に入り、成長分野に対しても十分に取り込めていなかったので、この際、「全館」を見直しMD面で是正、強化するところから始めようと取り組んでいます。

 それに加えて、ターミナル百貨店として新しい機能を付加して見直しています。現在の営業面積8万3000m2の売場スペースと年間5000万人の来店客数という当店の現況からして、このポテンシャルをいかに活用していくか、これを全館改装の課題に掲げました。

 そのためには、どのような方法をとらなければいけないのか。当然ながら百貨店的な機能を核にしながら、それ以外の施設を含め、いろんな人がいろんなシチュエーションを楽しめる“駅上ショッピングセンター(SC)”を目指そうと考えたわけです。

 これを“新ターミナル百貨店”と位置付け、百貨店機能と時間消費型施設を一体とした構築を目指したのが、今回の全面改装の基本的なコンセプトです。

 そのなかで核となる百貨店については、「大人の上質な百貨店」を目指すことを改装テーマにしています。

−今年3月下旬の前期改装分がオープンしましたが、見所は、どんなところですか。

橋本 全館改装計画にもう少し触れますと、まず、ターミナル百貨店としてターゲットを幅広く取り、施設も含め充実させていくという狙いがあります。二つ目は、百貨店の多機能化を考え、「低価格専門店」がこれからは必要になってくると思い、その導入(たとえば「ユニクロ」等)も図っています。

 三つ目は、当店の強みでもある食料品の再強化で、この三点を第1期改装計画の柱にしました。

 

「副都心線」対応ではまず、
食品を再強化
洗練された東武百貨店のイメージも発信 

−いまのところ、食品売場の改装が話題として先行していますが。

橋本 話題が先行している食品売場の改装については、6月14日の「副都心線」開通に照準を合わせて、通路に面した食品売場を大きく変えました。

 特にエントランスゾーンは、売場をカットしセットバックさせ、サロン風な玄関をつくりお客さまをお迎えすることにしました。また、通路を広くし段差があるところはスロープ化して、環境面を快適なものに変えました。そうすることによって、「東武百貨店は変わったな!」という印象をお客さまに与えておきたかったのです。

 次に、「見やすく、選びやすく、買いやすい売場」を基本にして、食品売場の改装に重点的に取り組んだわけです。そこでは、デイリー性をどう強化していくかということをテーマにし、MD強化にあたりました。

−地下1階は、スイーツで固めました。和洋菓子売場改装のポイントは何でしょう。

橋本 地下1階の菓子ゾーンについては、これから需要が顕在化すると思われる顧客一人ひとりのニーズに対応し、充実させました。これまでややギフトに頼りすぎてきたきらいがありましたので、進物・贈答品ではなく、毎日の生活のなかで自家消費していただくような商材を増やしています。
 代表的な新ブランドとしては、バームクーヘン専門店「ねんりん家」を入れましたところ大変な人気です。また、百貨店初出店の和菓子「金沢和音」も好評です。

−地下2階の惣菜・生鮮売場については、どんな改装ポイントですか。

橋本 地下2階は、惣菜ゾーンの店舗数を増やし、売場を強化・拡大しました。百貨店初出店となるイタリア料理の「キャンティ」、うなぎの「赤坂ふきぬき」などです。生鮮については、より専門性の強い店として「魚力」、鮪専門店の「鈴木水産」、京野菜の「八百一」、百貨店初出店の「サイボクハム」など生鮮三品(鮮魚、野菜、精肉)についても充実させました。

 池袋駅周辺エリアは、GMSを含めて競合するスーパーがあまりありませんので、都内の百貨店のなかでも生鮮売上げの比率が高い地域です。そういう点からも生鮮ゾーンの専門性を高めたわけです。

百貨店初出店の和菓子「金沢和音」(本館地下1階) 鮪専門店の「鈴木水産」(本館地下2階) 京野菜や果物の「八百一」(本館地下2階)
左●百貨店初出店の和菓子「金沢和音」(本館地下1階)
中●鮪専門店の「鈴木水産」(本館地下2階)
右●京野菜や果物の「八百一」(本館地下2階)

 

“二極対応”と“サービス強化”が奏功し
“改装効果”は食品先行、「プラザ館」にも波及

−ターミナル百貨店の多機能化のなかで今回、どのような対応をなさいましたか。

橋本 上下の二極化対応とサービス機能の強化といえます。まず、衣料品では低価格帯の「ユニクロ」や「スリーミニッツハピネス」に出店いただきました。単に安いだけではなく時代を感じさせるブランドに絞って導入しました。また、今年3月には「ギャップ」よりワンランク上の「バナナ・リパブリック」を導入しました。

 いずれも、お客さまの価格と価値に対するチェックが厳しくなっており、こうした低価格帯ブランドの導入も図りながら、来店されるフルターゲットのお客さま対応に改めました。

 また、当店の主力顧客であるミッシー、ミセス向けの商品強化を目指して、婦人服売場を拡大しました。
 そのほか、時間消費型の施設として、レストラン街の13階に料理教室の「ABCクッキングスタジオ」を設置しています。これは、それまで当店には少なかった30〜40歳代の女性にご来店いただくのが狙いです。また、9階屋上に女性専用の簡易型フィットネススタジオ「ボディーズ」を導入し、健康に関心をもつニーズも取り込んでいます。

 家具売場は、これまでかなりのスペースを使っていましたので、今回、売場を縮小しても効率の低下にはならないだろうと考え、思い切って縮小しました。家庭用品についても重複するアイテムを整理して売場を見直しました。

 百貨店から家具売場がだんだん消えていく状況にありますが、家具全体の売上げは、けっして悪くはありません。お取引先のショールームを使って販売するなど、いろいろな方策を考えながら売場面積減をカバーしていきたいと思っています。

−現在、改装効果は、数字にどのように表われていますか。

橋本 やはり生鮮・惣菜売場が先行して好調です。特に野菜売場は、想定の3割増で推移しています。「本館」の生鮮売場を改装したので、「プラザ館」の生鮮が悪くなるのではと心配していましたが、実際はプラザ館の食品売上げもアップして改装効果が出ています。お客さまが両方をうまく使い分けておられ、相乗効果が出てきているのだとみています。

 他の改装フロアでは、リビングの洋食器がたいへん順調にきています。

─“上顧客”対応については、どう対応されていますか。

橋本 池袋本店には2万人強の上顧客がいらっしゃいます。そこで、6階に上顧客専用の「ロイヤルサロン」を設けて、おもてなしをしっかりさせていただきました。なかでもサロンのなかに新たに設けた専用のお手洗いは、たいへん好評です。また宝飾・時計売場をロイヤルサロン並びに移設し、買物しやすいように売場を改編しました。

−大丸東京店のメンズの評価は、高いですね。センスのよいネクタイが取り揃えられている点に象徴されています。男の大丸ファンは少なくないですよ。

 

地下鉄「副都心線」開通で、
街づくりの気運が再燃、
来店数アップは確実に!

−6月14日の地下鉄「副都心線」開通で、“地区団体戦”は新宿地区の百貨店がひとり勝ち、池袋は苦戦するのでは…といわれていますが、どう展望されていますか。

橋本 埼京線が池袋から新宿に延伸したときも、池袋は空洞化するだろうといわれました。ところが実際は、一時的には影響がありましたが、その後ほとんど影響はありませんでした。そして、都営大江戸線が新宿まで開通したときにも、練馬の方々は新宿に行くだろうと言われましたが、このときも結果的にはほとんど変動はありませんでした。こうした経緯からすると、それほど影響はないだろうとみています。

 むしろ副都心線が開通することで、池袋駅西口の回遊性はよくなるだろうと思います。開通を契機に街づくりの動きが活発化しており、東京メトロが今年度中に「エチカ池袋」を地下通路にオープンします。また、09年度には池袋西口駅前に地下3階地上9階建ての商業施設が竣工しますので、人の流れはさらに多くなるでしょう。

 副都心線が開通しても乗客のすべてが新宿や渋谷にそのまま行くのではなく、JR線や丸ノ内線、有楽町線などに乗り換える人もいますので、当店の前を通る人が確実に増えて新しいお客さまが見込めますから、当店にとってはプラスになるだろうと考えています。

 

「後期改装計画」は
09年から着手
“新しい顧客創造”が今後の課題

−最後に、「第2期改装計画」について、内容をお聞かせ下さい。

橋本 現在の計画では、09年から3か年かけて進めていきます。まず、09年にプラザ館地下1、2階の全面改装を予定しています。それ以降、婦人雑貨、紳士服、レストラン街の改装などを計画していますが、お客さまのニーズも変わってきていますので、重要性・緊急性を勘案しながら進めていきます。

 いかにお客さまのご要望に応えていくかというのが百貨店の使命ですから、「改装計画」がこうだから、必ずこれでいくということではありません。

 今後の課題としては、当店が主力とするお客さまに対応することに加え、それだけではお客さまは減っていくわけですから、「新しいお客さまをどう取り込んでいくか」、新しい顧客創造に対応することが重要となります。

 これを頭に入れて、今後も改装計画に力を入れていかなければいけないと考えております。

−本日はお忙しいところ、誠にありがとうございました。

精肉の「サイボクハム」(本館地下2階) 6階に設けられた上顧客専用の「ロイヤルサロン」 東武百貨店と西武百貨店は池袋駅地下コンコース内で、副都心線が開通した6月14日、15日の2日間、「LOVE IKEBUKURO」キャンペーンを実施。「西武・東武 池袋総合ご案内所」を設置して、来街者に両店をアピールした
左●精肉の「サイボクハム」(本館地下2階)
中●6階に設けられた上顧客専用の「ロイヤルサロン」
右●東武百貨店と西武百貨店は池袋駅地下コンコース内で、副都心線が開通した6月14日、15日の2日間、「LOVE IKEBUKURO」キャンペーンを実施。「西武・東武 池袋総合ご案内所」を設置して、来街者に両店をアピールした

 

斎藤秀樹の提言


 ポテンシャルの塊・池袋地区

 都の西北と副都心各駅(池袋―新宿―渋谷)をダイレクトに結ぶ最後の地下鉄「副都心線」が去る6月14日(土)に開通し、新しいメトロとして仲間入りを果たした。
 同線開通がもたらす功罪については、いろいろ取り沙汰されているが、地域価値創造の面で大幅に立ち遅れている池袋地区だけに、将来最も大きな果実を実らせてくれる出来事と確信している1人だ。

 なぜならば、今回の地下鉄開業を契機にして、再開発計画や内外からの投資が本格化するのは時間の問題であり、「ピンチは絶好のチャンス」となる典型的なケースともいえる。
 その兆候は、地下鉄開業前からすでに表われてきており、現在、池袋西口では地下街「エチカ」の開発工事が進行中である。直近では、豊島区が東西池袋の活性化へ向け具体的なプランを発表するなど、官民挙げて開発へ向けた動きが活発化している。

 しかしながら、今回の開業をよく宣伝・PRしてくれたのはマスコミで、感謝状を差し上げてもよいくらいだ。

 テレビ各局は、申し合わせしたかのように特番を組み「副都心線開通で熾烈化する百貨店戦争」、または「地域間競争は激化し、“団体戦”に突入」と囃し立てたのである。
 マスコミの評価は、おおむね同線開通で「漁夫の利を得るのは“原宿”周辺で、顧客流出に拍車がかかりシビアになるのは“池袋”」と判官贔屓をまじえた解説さえあった。

 言い替えれば「今後、有望地区は池袋であり、最もポテンシャルなエリアだ」とPRしてくれたようなもの。

 しかしながら、競争の世界は、ライバル関係にも新しい地平を切り開いたようだ。今回の事例でいえば、これまでの恩讐を越えて“握手し、地域のために行動しよう!“という連帯意識が強まったことだ。

 是非、今後は、他の副都心地区では見られない“地域本位のアクション”を東武グループと西武グループに期待したい。

 というのは、昔から池袋の街は、別名“駅袋”と揶揄されてきたように東武百貨店と西武百貨店の力は絶大で、商店街が健全に育ってこなかった経緯もある。

 両店が全館改装を果たし、新宿と伍していける魅力的な百貨店をつくることは大事なことである。しかし、一方で“駅袋”から脱却するための方策を準備しなければならない時だ。

 百貨店全館改装後の次のステップは、間違いなく「地域商店街とどう連携し、盛り立てていけるか!」がテーマとなろう。

  真に街づくりを成功させるためには、百貨店の“部分最適”に加えて、こうした街全体が活性化する“全体最適”を志向する時代に入ったようだ。


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