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国内外で活躍する21人の作品を展示、
現代アートによる街づくりで地域活性化を目指す
 
 十和田市現代美術館

 去る4月26日、青森県十和田市に「十和田市現代美術館」が開館した。

 日本の道百選に選ばれている十和田市の官庁街通りには国や県の出先機関ならびに市の公共施設が建ち並んでいたが、省庁再編などによる転居で空き地が多くなり、景観のうえからも問題となっていた。そこで十和田市は、魅力的で美しい官庁街通りの景観を創出するとともに、未来に向けた新しい街づくりを目指したプロジェクトとして「野外芸術文化ゾーン」(Arts Towada)を推進。その中核施設として同美術館の建設を06年7月から進めていた。

十和田市の官庁街通りに沿って、大小16の建物から構成される「十和田市現代美術館」
十和田市の官庁街通りに沿って、大小16の建物から構成される「十和田市現代美術館」

 Arts Towadaのコンセプトは、長さ1.1kmにわたる官庁街通り全体を美術館と見立て、多彩な現代アート作品の展示やアートプログラムを実施することでアートによるまちづくりを行なうもの。美しい自然に恵まれた十和田市を個性溢れる「アートの街」として国内外にアピールして観光客の誘致を図り、地域活性化につなげるのが狙いだ。今後の計画として、美術館向かいにシンボルアートを設置、沿道にはストリートファニチャーの整備を予定しており、Arts Towada全体の完成は10年春を目指している。

 同美術館は、オノ・ヨーコをはじめ国内外で活躍する21人のアーティストによるコミッションワーク(依頼制作による恒久設置のアート作品)を展示している。常設展示室を「アートのための家」として敷地内に独立させながら点在させ、その間をガラスの廊下でつなぎ、中庭やイベントスペースを設けることで美術館全体がアートのための集落のような構成となっている。また、大きなガラス張りの展示スペースは街に向かって展示されているかのように配置され、街並みと一体となった開放的な空間を形成している。常設展示室のほか、企画展示室、休憩スペース、市民活動スペース、屋外イベントスペースなど市民参加型の美術館としての機能も備えている。

 地方都市の現代美術館には、交通アクセスの不便な郊外に立地するケースがみられるが、現代美術館は街中にあってこそ、市民は日常的に親しむことができるのであり、美術館の存在意義も高まるといえる。地域経済の低迷、人口の高齢化、若者の流出など、地方都市では多くの課題を抱えている。十和田市のような現代アートによる街づくりは全国的にもめずらしい先駆的な試みだが、同美術館を通じて市民の意識がどのように変化し、街の活性化につながっていくのか、大いに注目される。

メイン・エントランス前の屋外イベント・スペースに展示されたチェ・ジョンファ(韓国)の 「フラワー・ホース」。官庁街通りは戦前、旧陸軍軍馬補充部が設置され、「駒街道」として市民に親しまれていることから、馬をモチーフに制作された カラフルなビニールテープでエントランス・ホールの床一面を飾ったジム・ランビー(イギリス)の「ゾボップ」 ビルの谷間のような屋外空間に、2体の人物の彫刻作品を設置した森北伸の「フライングマン・アンド・ハンター」
(左)●メイン・エントランス前の屋外イベント・スペースに展示されたチェ・ジョンファ(韓国)の 「フラワー・ホース」。官庁街通りは戦前、旧陸軍軍馬補充部が設置され、「駒街道」として市民に親しまれていることから、馬をモチーフに制作された
(中)●カラフルなビニールテープでエントランス・ホールの床一面を飾ったジム・ランビー(イギリス)の「ゾボップ」
(右)●ビルの谷間のような屋外空間に、2体の人物の彫刻作品を設置した森北伸の「フライングマン・アンド・ハンター」

ネオンで照らされた六角形のトンネルを抜け、光と音とガラスで構成された空間そのものを五感で体験するアナ・ラウラ・アラエズ(スペイン)の「光の橋」 アザラシと同じように、下から天井裏を覗き込むと、驚きの異空間が出現する栗林隆の「ザンプランド」
(左)●ネオンで照らされた六角形のトンネルを抜け、光と音とガラスで構成された空間そのものを五感で体験するアナ・ラウラ・アラエズ(スペイン)の「光の橋」
(右)●アザラシと同じように、下から天井裏を覗き込むと、驚きの異空間が出現する栗林隆の「ザンプランド」

建物の内外をさ迷いながら、宝探しのように楽しめる山極満博の「あっちとこっちとそっち」。各建物は透明なガラスの回廊で結ばれている コスタリカの熱帯雨林に生息するハキリアリの突然変異を彫刻作品にした椿昇の「アッタ」 オノ・ヨーコの「念願の木 三途の川 平和の鐘」。願いごとを短冊に書いて吊るすことができる「念願の木」、玉石を川に見立てた「三途の川」、京都大覚寺から寄贈された「平和の鐘」で構成されている
(左)●建物の内外をさ迷いながら、宝探しのように楽しめる山極満博の「あっちとこっちとそっち」。各建物は透明なガラスの回廊で結ばれている
(中)●コスタリカの熱帯雨林に生息するハキリアリの突然変異を彫刻作品にした椿昇の「アッタ」
(右)●オノ・ヨーコの「念願の木 三途の川 平和の鐘」。願いごとを短冊に書いて吊るすことができる「念願の木」、玉石を川に見立てた「三途の川」、京都大覚寺から寄贈された「平和の鐘」で構成されている

赤、オレンジ、透明の樹脂製人形を数万個つなげ、天井から吊り下げたスゥ・ドーホー (韓国)の「コーズ・アンド・エフェクト」 人肌、毛髪などの質感をリアルに再現した高さ約4mの巨大彫刻は、ロン・ミュエク(オーストラリア)の「スタンディング・ウーマン」
(左)●赤、オレンジ、透明の樹脂製人形を数万個つなげ、天井から吊り下げたスゥ・ドーホー (韓国)の「コーズ・アンド・エフェクト」
(右)●人肌、毛髪などの質感をリアルに再現した高さ約4mの巨大彫刻は、ロン・ミュエク(オーストラリア)の「スタンディング・ウーマン」

日没から21時まで、壁面に照射された光が色鮮やかに変化する高橋匡太の「いろとりどりのかけら」 企画展示室では、開館記念として「オノ・ヨーコ 入口」を開催(4月26日〜7月6日)。展示作品の「テレフォン・サービス」では、オノ・ヨーコから電話がかかり、入館者は彼女と直接会話が楽しむことができた
(左)●日没から21時まで、壁面に照射された光が色鮮やかに変化する高橋匡太の「いろとりどりのかけら」
(右)●企画展示室では、開館記念として「オノ・ヨーコ 入口」を開催(4月26日〜7月6日)。展示作品の「テレフォン・サービス」では、オノ・ヨーコから電話がかかり、入館者は彼女と直接会話が楽しむことができた

約13mの3層吹抜けの階段内部と、そこから続く屋上を即興的に描いたフェデリコ・エレーロ(コスタリカ)の「ウォール・ペインティング ミラー 約13mの3層吹抜けの階段内部と、そこから続く屋上を即興的に描いたフェデリコ・エレーロ(コスタリカ)の「ウォール・ペインティング ミラー
約13mの3層吹抜けの階段内部と、そこから続く屋上を即興的に描いたフェデリコ・エレーロ(コスタリカ)の「ウォール・ペインティング ミラー

空中に漂う幾何学的作品は、トマス・サラセーノ(アルゼンチン)の「オン・クラウズ 官庁街通りに面した休憩スペースには、カフェ、ミュージアムショップを併設。壁面に描かれているのはポール・モリソン(イギリス)の風景画「オクリア」
(左)●空中に漂う幾何学的作品は、トマス・サラセーノ(アルゼンチン)の「オン・クラウズ
(右)●官庁街通りに面した休憩スペースには、カフェ、ミュージアムショップを併設。壁面に描かれているのはポール・モリソン(イギリス)の風景画「オクリア」


十和田市現代美術館
館長

村山 康子

世界的にも注目の現代アート作品を
多数展示していますので、
大勢の方にご来館いただき、
十和田市の活性化につなげていきたいです

村山氏

 十和田市のシンボルロードである官庁街通りに空き地が目立つようになって景観が悪くなり、それとほぼ同時期に十和田市の中心商店街の衰退も深刻化し、地域の活性化を図るためにも何らかの対策が求められていました。現市長がパリに行った際に、通りで現代アートの展示会が開催されているのをたまたま見て、官庁街通りでもアートをテーマに何か企画できないかと考えたのが、当美術館をつくる発端でした。

 官庁街通りは桜並木がとても綺麗で、毎年春には大勢の方が花見に来られます。しかし、通りには市民や観光客が立ち寄るような施設がないため、桜を見たらすぐに帰られてしまい、市としては滞留してもらえるような施設を官庁街通りにつくりたいと考えていました。

 美術館は16棟の建物から構成されていますが、各建物の高さや大きさは、アーティストと調整して決めました。官庁街通りに面した建物をガラス張りにすることで、通りからでも展示作品が見られ、明るく開放的な美術館となっています。建築的には贅沢なつくりですが、アーティストにとっては自分の作品のための展示スペースを特別につくってもらえるのですから、制作意欲がかきたてられたのではないでしょうか。

 現代アートというと、一般の方にはわかりにくいところがありますが、展示作品は現代美術の知識がそれほどなくても、理解しやすいと思います。22の展示作品のなかでも目玉の作品が、身長4mの彫刻「スタンディング・ウーマン」(ロン・ミュエク作)です。そして人気が高いのが、ハンス・オプ・デ・ビークの「ロケーション(5)」です。ハイウェイの上にある喫茶店のような気分に浸れるので、若い方をはじめ年配の方も関心をもって見学されています。そのほか、樹脂製の人形を天井から吊り下げた「コーズ・アンド・エフェクト」(スゥ・ドーホー作)や、覗き穴から別世界を見る「ザンプランド」(栗林隆作)なども人気です。どの作品も、ここでしか見られないものばかりで、日本での初作品となるアーティストも多く、みなさんとても楽しんで帰られます。各アーティストが世界的に活躍し、「十和田市現代美術館では、21人の作品が一堂にご覧いただけます」とPRできれば、海外からの見学者が増えると期待しております。

 観光振興の面からも、当美術館は重要な役割を担っています。奥入瀬渓流、十和田湖には年間300万人近い観光客が訪れていますが、最近は減少傾向です。昨年あたりからトレッキングやカヌー、遊覧飛行などの参加型・体験型のアクティビティが人気で、観光のあり方が変わりつつあり、当美術館が奥入瀬渓流や十和田湖への中継点となるような方策を検討しています。そのためには、飲食等施設の整備が必要です。観光の楽しみのひとつに食事がありますが、残念ながら美術館周辺には飲食店が多くありません。また、お土産を買うお店もあまりないです。中心商店街に飲食店や土産店ができて市民や観光客がそちらに流れていけば、商店街の活性化にもつながりますので、その仕掛けを地域住民に働きかけしていきたいと思います。

 オープン後の来館者数は、おかげさまで順調で、開館から2か月で観覧者が5万人を突破しました。企画展示とともにイベントなども開催し、市民の誇りとなるような美術館にしていきたいと考えています。


[所在地]

青森県十和田市西ニ番町10-9

[オープン] 2008年4月26日
[運営主体] 十和田市
[構造・規模] 鉄骨造り・2階建て
[敷地面積] 4,358m2
[建築面積] 1,685m2
[延床面積] 2,078m2
[施設内容] 常設展示室、企画展示室、市民活動スペース、 休憩スペース、屋外イベントスペース
[開館時間] 9:00〜17:00(入館は16:30まで)
[料金] 一般500円
※高校生以下は無料、団体(20人以上)は400円。ただし、企画展は別途料金
[休館日] 毎週月曜日(祝日にあたる場合は翌日)
[来館者目標] 4万5,000人 (初年度の目標。うち有料入館者3万人)
[総事業費] 16億4,000万円 (Arts Towada全体では約26億8,000万円)
[URL] http://www.city.towada.lg.jp/artstowada/
 

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